債務整理
貸金業者に対して多額の借金を負っているが、当面の資力では、それらを約定どおり返済していくことが困難であるという場合、支払金額、支払期間などについて業者と協議し、新たに現実的に返済可能な約束をするという手段をとることができます。
これを一般的には、債務整理と呼んでいます。
このような債務整理は、あくまで債務者と貸金業者との間の私的な交渉なので、交渉や和解の内容等について特に法的な規制がなく、弾力的な解決が可能です。
また、場合によっては、法律上支払義務のある利息の範囲を超えて利息を返済してきた場合に、これを法律上支払義務のある利息の範囲に引き直すと、すでに債務は完済に至っており、逆に払い過ぎているということがあります。
このような場合には、業者に対して、払い過ぎた金額(過払い金)の返還を求めることができます。
業者との取引関係が長い場合には、過払い金が多額にのぼることも少なくありません。
債務整理は、通常、次のような流れで手続が進んでいきます。
(1)貸金業者に対する受任通知の発送
債務整理の委任を受けると、弁護士は、まず弁護士名義で、各貸金業者に宛てて、債務者から債務整理の委任を受けた旨の通知を発送します。
この通知により、弁済の催促や返済方法についての話し合いについては、全て委任を受けた弁護士が窓口となるので、債務者のところへ業者から直接催促等の連絡が来ることがなくなります。
複数の貸金業者に対して債務を負っている場合には、弁護士が各業者に漏れなく受任通知を発送できるよう、依頼をする債務者の側で貸金業者の業者名・営業所の住所を整理したメモを持参していただくこととなります。
多数の業者から日々催促を受ける債務者の負担を一刻も早く軽減するため、受任通知は早急に発送する必要があるので、このようなメモの持参が重要です。
また、弁護士はこの受任通知書と併せて、各業者に対し、これまでの取引経過の開示を求める書面を送付します。
貸金業者がこれに応じて取引履歴を記載した資料を返送してくると、それまでの借金・返済の具体的な内容が明らかとなります。
(2)取引履歴に基づく引き直し計算
貸金業者から送られてきた取引履歴を精査すると、法律上許される利息の範囲を超えた利息の支払がされていることが少なくなく、そのような場合には、貸金業者に対し、残債務の減額を求めたり、過払い金の返還を求めたりすることになります。
(3)和解交渉
取引履歴に基づく引き直し計算が済むと、弁護士は、その結果に基づき、各貸金業者と返済金額・返済方法等について和解交渉に入ります。
法律上の制限を超えた利息の請求がなされている場合には、それまでの超過利息を元本に充当するなどし、残債務額の減額交渉をします。
また、残債務の返済方法についても、現実的に可能な額での分割による返済方法を提案するなどして和解交渉をします。
和解が成立した場合には、合意した内容について和解契約書が作成され、これにより一応の解決となります。
以後は、和解契約書の内容にしたがった返済を滞りなく行っていく努力が必要です。
(4)過払い金返還請求訴訟等
引き直し計算の結果、過払い金が発生している場合には、その返還を求める訴訟を提起することが可能です。
しかし、訴訟を提起することには新たに時間的・経済的負担が伴うことから、過払い金が生じていても、その額によっては、むしろ訴訟を提起しない方が債務者の利益にかなうことがあります。
したがって、過払い金が生じているからといって常に返還を求める訴訟を提起するのが妥当であるというわけではありません。
もっとも、多額の過払い金が生じている場合には、積極的に過払い金の返還を求める訴訟の提起を検討するべきです。
訴訟提起後、貸金業者の側から和解の申し出がなされ、それほど労力をかけることなく、速やかに過払い金の返還を受けることができる場合も少なくありません。