お金の貸し借り

お金を貸したのに返済の期限が過ぎても返してもらえない、またはお金を借りた覚えはないのに返済を要求された、すでに返済したにもかかわらず再度返済を要求された、というような、お金の貸し借りに関するトラブルについては、次のような解決方法があります。

お金を貸したと主張する側の解決方法

(1)内容証明郵便を利用した支払請求

借主に口頭で催促しても貸したお金を返してもらえないという場合、まずは、内容証明郵便により書面で支払の催促をします。
内容証明郵便とは、郵便として差し出した文書の内容を郵便局に証明してもらうことができる特殊な郵便物です。
内容証明郵便により
①その文書の差出人と受取人、
②その文書の内容、
③その文書が差し出された日付(及び時間帯)、
④文書が受取人に配達された事実と配達された日付、

を証明することができます。

当事者間の契約で返済期限(平成〇年〇月〇日など)が最初から決まっていれば、その期限が到来することにより、当然に返済を要求できるので、借りた側は、その日の翌日から、遅滞に陥ります。
返済の遅滞に陥ると、遅延損害金が発生するので、貸した側はこの遅延損害金も合わせて請求できます。

当事者間の契約で返済期限が決まっていない場合(貸主が返済を求めたときに借主が返済することを約束した場合)、貸主が相当の期間(たとえば返済要求から1週間以内)を定めて借主に対して返済を求めると、この相当の期間の末日が返済期となります。
したがって、この場合、貸主が返済をしたことと相当の期間の末日が到来したことが重要となるので、内容証明郵便によって借主に催促をしておくことには大きな意義があります(後に催促されて事実の有無や遅滞に陥った日がいつかについて争われた場合にこれを証明する証拠となります)。
また相当の期間の末日の翌日から借主は返済の遅滞に陥るので、貸主はこの日を起算日とする遅延損害金の支払も請求できます。

このように返済の催告を内容証明郵便によって行うことには重要な意義があります。
内容証明郵便の書式等には一定の制限があることに注意が必要です。

(2)支払督促制度を利用した請求

内容証明郵便を送付しても借主が返済要求に応じない場合、通常、次に思いつくのが訴訟によって返済を請求する方法ですが、金銭の給付等を目的とする請求については、裁判所書記官に対して、支払督促の申し立てをすることができます。

支払督促とは、その名のとおり、債務者に対して、金銭の支払い等を督促する手続ですが、裁判所ではなく、裁判所書記官の権限によってなされます。
支払督促の申立てがなされると、裁判所書記官は、申立ての形式的な要件が充たされているかだけをチェックし、請求の内容的な当否については審理をしないで、ひとまず、債務者に支払督促を送付します。
送達を受けた債務者は、支払督促に対して異議があるときは、通常訴訟による審判を求める申立てをすることができます。

債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に異議を申し立てないときは、裁判所は、債権者の申立てにより、仮執行宣言をします。
この仮執行宣言のついた支払督促の送達を受けてから2週間以内に債務者が異議の申立てをしないと、督促手続は終了し、支払督促は判決がなされた場合と同様の効力を持つことになります。
つまり、債権者は支払督促を根拠に、債務者に対して強制執行をすることができます。

このように、債務者が異議を申し立てなければ、支払督促の請求の内容について認容判決がなされた場合と同様の効力を有することになるので、支払督促は、訴訟よりも簡易な手続によって判決と同様の効力をえることができる便利な制度といえるでしょう。
債務の存在とそれについての債務者の承認が明らかな事案では、有効な手段といえます。

(3)訴訟による支払請求

内容証明郵便による請求に対して債務者が応じない場合や、支払督促に対して債務者が異議を申立てた場合には、訴訟を提起して貸金の返還を請求することになるでしょう。

訴訟においては、まずは、原告が、被告との間でお金の貸し借りがされた事実を主張する必要があります。
被告がお金を借りた事実を否認した場合(たとえば、借りたのではなくもらったと主張したような場合)、原告は、証拠(金銭消費貸借書等)によってお金の貸し借りがあったことを立証する必要があります。

また、被告がすでに弁済をした、債権が時効によって消滅した、などと主張して、返済義務を争った場合は、原告は、その事実についての被告の立証を弾劾し、返済義務のあることを主張していくことになります。

お金を借りたとされた側の解決方法

お金を借りた覚えはないのに返済の要求をされた、すでに返済したにもかかわらず返済の要求をされた、というような場合の解決方法は、貸主と主張する側の請求方法に応じて以下のようになります。

(2)内容証明郵便による支払請求を受けた場合

貸主と主張する側から内容証明郵便による支払請求を受けた場合に、返済義務の存在を争う場合には、その主張内容を記した書面を相手側に送付し、支払に応じる意思がないことを明確にするべきでしょう。
返済義務のないことを主張するにあたっては、その具体的内容(借りた事実はない、借りた事実はあるが弁済により消滅した等々)も明確にしておくべきです。

(2)支払督促の送達を受けた場合

貸主と主張する者が支払督促(制度概要については上記1参照)の申立てを行い、裁判所書記官による支払督促の送達を受けた場合、返済義務の存在を争うときには、支払督促の送達を受けた日から2週間以内に異議の申立てをします。
この督促異議の申立ては、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に対して行います。

督促異議の申立てを行うと、それまでの手続は通常訴訟に移行し、貸主と主張する側(原告)と借主と主張された側(被告)は、裁判で、それぞれの立場に応じて主張・立証・防御を行って返済義務の存在を争うこととなります。

(3)訴訟による解決方法

①訴訟による支払請求を受けた場合

貸主と主張する側(原告)が訴訟によって支払を請求してきた場合、借主とされた側は、被告として、返済義務の存在を争うことになります。
被告は、原告が返済義務の事実として原告被告間で金銭の貸し借りの合意があったこと(金銭消費貸借契約が締結されたこと)を主張してきたのに対して、たとえば、貰った金銭であるから返済義務はないと主張して争うことができます。
原告が金銭消費貸借契約書を証拠として提出した場合には、その契約書の真正に成立したものではないことを主張すること等が考えられます。

また、金銭を借りた事実を認めつつ、すでに返済したから返済義務はない、債務は時効によって消滅したから返済義務はない、などと主張して争うこともありうるでしょう。
その場合には、たとえば、弁済の事実については、領収書などを証拠として提出し、弁済があったことを積極的に主張・立証する必要があります。

②債務不存在確認訴訟の提起

以上のように、貸主と主張する側が訴訟を提起してくる前に、借主は債務が存在しないことの確認を求める訴訟(債務不存在確認訴訟)を提起することも可能です。

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